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スタメシから見るプロ野球ビジネス

category : メールマガジン2025 2025.5.31 

5月に入り温かさを感じるようになりました。
6月に入ると湿気を感じるため、野外イベントを楽しむには心地よい時期でしょう。
特に野球の屋外でのデーゲームとなると、これ以降は9月末まで暑い中での応援となり、とてもオススメできません。
そういうわけで野球ファンの方々にはこの時期、積極的に球場に足を運んでいただければと思います。

現在、都市部を除けばもっとも再開発が進んでいる地域と言われているのが北海道・北広島市。
人口わずか6万人弱の都市に、タワマンや大学のキャンパスが建つ計画まで進んでいます。
企業進出も活発になり地価は上昇、人口も増えるという好循環。他の地方自治から垂涎の的となっています。
なぜこのようになったのかと言えば、北海道日本ハムファイターズが新球場をひっさげて移転してきたからです。

2023年にオープンした日本ハムファイターズの新たな本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」。
外野は天然芝(内野は人工芝)、スライド式の屋根、外野のガラスウォールはその巨大さからギネスにも認定されました。
もっとも日本で美しい球場といっても差し支えないのですが、当初は立地面からビジネスとして成り立つのか疑問視されました。
しかし、蓋を開けてみれば大成功。他球団の選手・ファンも羨む球場となっています。
総工費は600億円とも言われますが、なぜこのような大プロジェクトを日ハムが行ったのか?
札幌ドームの使用料が高額だったこともありますが、かねてより悲願だった球団と球場を一体化させ、外部条件に左右されない球団運営を行うことでした。

NPBは長らく巨人の人気、およびそこから得られる放映権料に頼ったビジネスモデルを行ってきました。
しかし、時は流れて野球人気は陰り、巨人戦はキラーコンテンツではなくなってしまいます。
放映権料に頼れないとなると、ファンに球場に足を運んでもらう、という原点回帰に戻るしかありません。
それをセ・リーグよりも10年以上早く行っていたのがパ・リーグです。
転機となったのがダイエーが南海ホークスを買収し、福岡へ移転させたことです。
その後ロッテが千葉、日ハムが北海道、楽天が宮城へと移転し、地域のファンの掘り起こしに成功します。
とはいえ、観客席は有限。収益を上げようにもチケット収入だけでは限界がありました。
そこで求められたのが球団と球場の「一体運営」です。
一体運営の最大のメリットは、球場内の飲食物や看板スポンサー収入が得られる、ということに尽きます。
というわけでここ数年で急速に各球団による一体運営がすすめられてきました。

12球団のうち、完全な意味で一体運営を行っているのがソフトバンクと日ハムです。
親会社あるいはグループ会社が球場を運営しているのが阪神、中日、横浜、オリックス、西武。
自治体から指定管理者に認定してもらい球場を運営しているのがロッテ、広島、楽天。
上記10球団は球場使用料のコストはゼロあるいはほぼゼロに抑え、球場内の売上を計上することができます。
巨人も遅まきながら東京ドームの権益を確保することに成功し、高額の球場使用料を抑えることができるようになりました。
とはいえ、その割合は20%と言われ、球場から得られる利益は他球団よりも劣ると見ていいでしょう。
この流れから置いてきぼりになりそうなのがヤクルト。
神宮球場は明治神宮所有なので、ヤクルトの自前球場になることは今後もありません。
これからも高額な球場使用料を支払い続け、他球団のビジネスを指を咥えて見るしかないというわけです。

一体運営は確かに色々なメリットがありますが、良いことづくめというわけではありません。
固定資産税を払わなければなりませんし、試合がない日の回転率を上げなければなりません。
各球団とも年間試合数は約70試合ですから、残り290日をいかに有効活用するのか?
各種イベントが目尻押しの東京ドームは別格ですが、他球場ではなかなか難しいというのが実情でしょう。
ここでも大いに参考になるのが上記のエスコンフィールドです。
球場だけでなく、周辺施設も充実化させることで、試合がない日でも人を来させる工夫がなされています。
グラウンドに降りれるようになっていますし、球場内のサウナを楽しむこともできます。
そして何より力を入れているのはフード類。
エスコンフィールドのスタジアムグルメ(通称スタメシ)はファンの間ではもっとも高い評価を得ているそうです。
それもそのはず、あの日本ハムが運営しているのですから味はお墨付きでしょう。
また、ここに出展している店舗には選手監修のスタメシが用意されており、それを探すのも楽しみの一つです。
このように試合のない日でも、自然と足を運びたくなるフードが用意されているのです。

選手監修のスタメシですが、今では各球場のキラーコンテンツと化しています。
この球場でしか食べられないという希少性がファンの心をくすぐるのでしょう。
全てのメニューを食べるために球場に通うというファンは少なくないはずです。
自分のひいき選手のスタメシを食べながら試合を見る、なかなか格別な体験ではないでしょうか。
ただし、少々値段が張りますけど・・・

参考資料
『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』
『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』
『データ・ボール ―アナリストは野球をどう変えたのか―』

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