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アスリート食の現状を知った

category : メールマガジン2021 2021.10.31 

オリパラが終わり、コロナ禍のスポーツの在り方が大きく問われていたが、アマチュアスポーツが社会構造の大きな役割を果たしていると確認できたように思う。
個人的には、スポーツと大歓声は切っても切れない関係だと改めて感じた。

先日、アスリート食について、公認スポーツ栄養士の講演会に参加する機会があった。
数十年前とは違っており、アマチュアスポーツでも深く論理的になっていた。
新たな義務教育として必要な学問ではないかと感じるほどであった。

普段の生活でTVやSNS上では、健康のための食事として、塩分控えめ、糖質少なめ、カロリーOFF、ダイエット、高たんぱくなどの用語が生活の質向上のためのコンセプトとしてよく取り上げられている。
しかし、アスリートにとってはこれらの用語は、ミスリードになりかねないものであることを知った。
アスリート自身が、栄養学と生理学を学ぶとともに、自身の食事の記録と栄養計算を地道に行えないと、ウエイトアップのためにせっかく付けた筋肉が目減りし、目的の試合直前に疲労困憊状態になってしまっている、なんてことになりかねないそうだ。
結論を先に言うと、頭がついていかないなら栄養学に関するトレーナーをつけましょう、ということである。
高校の部活で全国大会を目指すのであれば、目的別トレーナーがついているところがかなり多いようである。
全寮制でないならば、家庭向けへの栄養学の教育も施される。

☆たんぱく質摂取
粉末プロテイン飲料は4種程度のカテゴリーに分けられ、体重アップ用があればダイエット用もある。
プロテイン濃度もかなり違いがあり、コスパだけ見ていると大きく間違うことになる。
糖質を控えすぎると、筋肉の蛋白質がエネルギーとして使われてしまったり、蛋白由来窒素が糖質とのバランスに合わない過剰分として尿中に出てしまうことになるようだ。
過去に、プロ野球選手がSNSで卵白だけ多量に食べているシーンがあった。
糖質制限+高プロテインのイメージそのものである。
自身は別の時間帯に糖質も摂取するのであろうが、アマチュアアスリートのフォロワーから見ると、それだけの食事であるようにも見え、それが正しいとミスリードしかねない、と別の選手が警告のメッセージを発信していた。

☆糖質摂取
アスリートのための糖質摂取に関するガイドラインが、日本スポーツ協会からでているので参考にしてほしい。
かなり内容が深く実践するのは一筋縄ではいかない。
(下記出典と文献参照)
最近、メジャーリーガーエンゼルス所属の大谷選手が1日4500kcal食べている、すげえ!とニュースになったが、何も驚くことでは無く、それはごく標準的なバランスであることがこの資料からわかるであろう。
次に、低血糖状態は身体の誤動作によるケガにつながるらしいので、ドリンクに糖質は必須である。
ドリンクが胃に溜まるのを嫌がって飲むことを避ける者がいたが、それは、そのドリンクの浸透圧が低すぎたようだ。ハイポトニック飲料の浸透圧にすればすっと胃を通過してくれる。この場合、麦茶ではダメなのである。
また、糖質を取りまくる目的は、グリコーゲン貯蔵のためである。
講演会などで話を聞いていると間食を複数回行うにあたり、「食べる」とは言わない。
「入れる」と言う。もはや食事ではなく食事自体もトレーニングなのである。
正確に「入れる」ために深酒は厳禁とのこと。
糖質は、ドリンクでもゼリーでもおにぎりでもバナナでもよく、吸収速度にそれほど差は無いようである。

☆塩分摂取
ミネラルは、非常に細かい計算理論がある。
NaとClが重要であり、K、Mg、Caにも目を配る必要がある。
ヒトによって、汗の量や汗中の塩分濃度がかなり異なるため「自分用スペシャルドリンク」を開発しなければならない。
つまるところ、市販のスポドリだけでも麦茶だけでもダメなのである。
温度も重要である。熱中症対策のためには体温を下げる役割をドリンクが負う。
温度は5℃程度、つまり冷蔵庫で冷えた状態を維持したドリンクが必要であり、飲み終わるまで氷が溶け切っていないことが目安になる。
以上のとおり、糖質と塩分が目的通りの濃度が入った「自分用スペシャルドリンク」が必要なのであるが、もちろん、体調によるブレもあるので、2種以上必要となる。
まず、自分用の通常濃度のもの大量に。それから真水も必要。
そういえば、テニスの全豪オープンでゲームのコートチェンジ中に、顔を真っ赤(1月だが南半球なので真夏)にしたある選手が、何種類かのドリンクを飲み分けているシーンがあったが、意図的に成分や温度の違いなどの意味があるのだと理解できた。
マラソン選手がレース中のスペシャルドリンクを取り損ねると、”致命的”であることにも、もっとスポットを当てて深堀りすれば良いのにと感じた。

☆減量
アスリートのウエイトコントロールのための減量理論は非常に難しい。
プロボクサーの中には、カロリーメイトドリンクだけで減量中の数日を過ごすものもいると聞いた。
本当か? 難しすぎて&ミスリードが怖くてこれ以上書けません。

最後に、
これらの内容は、プロアスリート用の話ではなくアマチュアスポーツ向けの話である。
アマチュア向けとして、当然のようにここにドーピング問題も入って来るので奥はさらに深い。
終わらないですがここまでにします。
さあ、あなたは自身で計算しますか、トレーナーを雇いますか?

【参考出典】
日本スポーツ協会・アスリートの栄養摂取と食生活
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-34.pdf
【参考文献】
1)IOC Consensus Statement on Sports Nutrition 2010 http://www.olympic.org/Documents/Reports/EN/CONSENSUS-FINAL-v8-en.pdf
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