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加工食品の原料原産地表示義務化について

category : メールマガジン2016 2016.12.31 

既に報道もいくつもされており、ご存じの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、
加工食品の原料原産地表示制度に関する中間取りまとめが先月末に公表されました。
10回にわたる検討会を経て、今回の中間とりまとめが発表されています。
内容としては、国内で製造、加工した全加工食品に対して重量割合第1位の原材料に対する
原料原産地表示の義務化が決まっています。

この表記方法については、ざっくりと記載しますと、
①「国別重量順表示」が原則。国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを
 原則とするが、原産国が3か国以上ある場合は現行ルールと同様、3か国目以降を「その他」
 と表示する。「国別重量順表示」が難しい場合には、消費者の誤認を防止するための方法を明確
 にした上で、以下の例外表示を行う。(国名を複数記載する場合は【、】で区別)

②「国別重量順表示」を行おうとした場合に、対象原材料の過去一定期間における国別使用実績や
 使用計画からみて、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ「国別重量順表示」が困難で
 あると見込まれる場合に限り、使用可能性のある複数国を使用が見込まれる重量割合の高いもの
 から順に【又は】でつないで表示する(過去の取扱い実績等に基づき表示していることの記載も必要)。
 こちらも原産国が3か国以上ある場合は、3か国目以降を「その他」と表示することができる。

③「国別重量順表示」を行おうとした場合に、対象原材料の過去一定期間における国別使用実績や
 使用計画からみて、3つ以上の外国の産地表示に関して産地切替えなどのたびに容器包装の変更
 が生じ、「国別重量順表示」が困難であると見込まれる場合に【輸入】と括って表示することが
 できる。(3つ以上の外国の産地であることが条件)

④ ③の条件で原料原産地表示を行おうとした場合に、対象原材料の過去一定期間における国別使用
 実績又は使用計画からみると、この条件だけでは産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じる、
 つまり【輸入】の表示のみでは困難であると見込まれる場合は、【輸入】と【国産】を使用が見込
 まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示することができる

⑤対象原材料が中間加工原材料である場合は当該原材料の製造地を「○○製造」と表示することができる。

といった形での条件となりました。
一般的にいうと「通常表示」「可能性表示」「大括り表示」「可能性表示+大括り表示」「製造地表示」のいずれかで表示しなければいけない、ということです。
この件について詳細な内容がが気になる場合は弊社担当、あるいは営業までお問合せ頂ければ詳細なご説明はさせていただきます。

今回、加工食品における原料原産地拡大の考えは「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月31日閣議決定)において、『実行可能性を確保しつつ拡大に向けて検討する』ことと整理され、TPPの合意を踏まえて策定された「総合的なTPP 関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP 総合対策本部決定)において「原料原産地表示について、実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」こととされたことでこの原料原産地表示に関する検討会が開催されました。
そして、検討会の進む中で「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)において『消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保に資するよう、原料原産地表示について、全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める』とされたことで一気に検討会の流れも変わり、全ての加工食品に対しての原料原産地表示の義務化が進みました。大抵、このような一歩詳細な情報を開示することになった場合は、消費者側としての意見は総じて賛成になるのですが、今回は消費者側でも賛成、反対と意見がわかれました。(特に「可能性表示+大括り表示」。「輸入+国産」という表記は地球全部という意味では、等の意見も。)
検討会の議事録は読み応えはありますが、こういった消費者側の中でそれぞれの立場や事業者側の考え方がよくわかります(事業者側でも考え方がもちろん異なる方もいます)ので、一読して頂ければと思います。

さて、実際にこの表示方法が適用された場合にどんなことが想定できるのか。その辺りを考えてみました。
個人的に思ったのは・・・

・省略することが可能な『水』の表示をあえて原材料名に表記した場合、この『水』が重量割合第1位になるとその原産地を記載することができるのでは?
・対象となる原材料の原料原産地を出したくないために、複合原材料名表記の()表記を行っていたものをやめてしまい、「製造地表示」で終わるようにするところが出てくるのでは?
・食品表示基準で定められている原料原産地表示が必要な食品群(現行のまま継続)や、東京都の調理冷凍食品における原料原産地表示に関する条例との混同を消費者が理解できるのか?
・冷凍メンチカツの食中毒事故のように、一見調理冷凍食品に見えるものでも、営業許可、名称が異なる為に調理冷凍食品とは異なる為、東京都の調理冷凍食品における原料原産地表示と今回の原料現地表示で作成や確認する側での混乱が生じるのでは?(ここに業務用が絡んでくるとどうなるのか??)

などなど。

あまり、良い考えとは言えないかもしれませんがこういった条件は他にも増えてきそうです。

個人的な意見としては、表示を作成する側としては非常に大変なルールができたと思います。ただ、その一方でニーズはあるようなので、出来ないだけではなくこの範囲でしかできないことを事業者側としても消費者側に知って頂くよい機会にもなるのではないかなと思います。
消費者側としてもメリットを感じるものではないのであれば、無くなっていく方向への方向転換もあるかなとも思っています。
(良い評価となり今後、第2位、第3位までの開示に拡大するのはちょっと・・という気はしますが。)
ポイントとしては、やはり現行のルールにプラスアルファとなる部分での表示方法をどれだけの消費者の方に知って頂くことになるかでしょう。ここは優良誤認のリスクも含まれています。検討会の場では義務化になるのだから優良誤認とはならない、との各省庁からの見解もありますが、あくまで消費者がその表示をどのように思ったのか、といった所は優良誤認には影響しますので。。。
最低でも12月より改定された衣料品の洗濯表示の変更等のように確定後は報道関連でもたくさん報道されることはお願いしたいですね。

この義務表示化については、消費者としても事業者としてもかなり物申したい方はいらっしゃるかと思います。(私個人としてもその1人ですが。)
そういった方は今後、パブリックコメントが募集されるかと思いますので、そこで改めて決定した内容を確認頂き、自身や会社、協会等としての意見を出して頂ければと思います。

加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/food_labeling_other_161129_0002.pdf

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