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新たな食のインフルエンサーを探せ!

category : メールマガジン2024 2024.2.28 

今年の日本の冬は記録的な暖冬とのこと。
一部のスキー場では雪不足で頭を抱えているところもあるようで、雪を求めて北上せざるを得ないようです。
とはいえ寒いことに変わりはなく、家でヌクヌクしながら過ごしている人も多いのではないでしょうか。
ストリーミングなんかを見ながら。

現在ストリーミングが全盛期を迎えていますが、新型コロナ禍が収束したこともあり、曲がり角を迎えています。
事業を見直すところもでており、大規模なリストラが行われているところもチラホラ。
それはDisney+を運営するディズニーさえ無縁ではなく、事業の縮小を余儀なくされているようです。
とはいえ、表明しているリストラにより、いずれは採算ラインに乗せてくると思われます。
しかし、ディズニーの問題は別にあるようです。
それは主力である長編アニメや実写映画の興行成績が、思ったほどの利益が出せていないということ。
そのせいもあるのか、最近ではピクサーが2割もの人員削減をすることになりました。
2割ですよ2割!なぜこのようになったのか?

巷で言われているのは、質の低下、飽きられた、配信待ち、ポリコレへの配慮・・・
しかし、これらはあまり関係がないと思います。
作品の小粒感は否めないものの質は一定水準をクリアしていますし、ポリコレにしたってディズニーは昔から配慮してきました。(ポカホンタス、ノートルダムの鐘など)
配信待ちなら「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の大ヒットは説明がつきません。
これはあくまで私見ですが、人々のニーズをディズニー作品では満たせなくなったからではないかと思われます。
いや、満たせなくなったというより、人々が自身のニーズを満たせる作品に出会えるようになったため、ディズニー離れが起きた、というのが正確かもしれません。
そのニーズを満たした作品とは、日本のアニメーションのことです。

かつて日本のアニメを見るとなると、TVで見るぐらいしかありませんでした。
しかし、ストリーミングによってそういうハードルがなくなり、タイムラグなく見れるようになりました。
皮肉にもディズニー自身が強化しているストリーミング事業によって。
そして、日本アニメはそのジャンルの多さにより、人々のニーズを掴むことに成功したのでしょう。
古典名作、SF、ファンタジー、スポ根、ホラー、美少女ヒーロー、萌え系・・・
手間のかかる手書きアニメが、恐るべきスピードで制作されてきました。
量産を可能にしたのが漫画の存在です。漫画は言うなれば完成度の高いストーリーボード。
アニメーターは原作漫画を読むだけで作品のイメージを共有できるのですから。
そして最近はブーストがかかったかのように、凄まじい量が制作されています。
どう見ても国内需要だけではペイしきれないのですが、旺盛な海外需要によってそれをカバーしているようです。
日本のアニメ市場はここ10年で2倍ですが、海外向けに至ってはなんと6倍、市場規模も逆転しています。

さて前置きが長くなりましたが、このように絶好調の日本のアニメ、思わぬところに影響を及ぼしています。
それが「食」です。
アニメに興味を持つと、その物語で見ることができるライフスタイルに自然と目がいくのは世界共通のようです。
というわけで、日本のアニメを見て、そこに登場する食に興味を持つ人が非常に多いのです。
例えば、おにぎり。
これなどはポケモンが見られるまでは、海外に知られることはありませんでした。
しかし、アニメを見て「あの食べ物は何?」と思っていた人は多く、来日の際はコンビニでおにぎりを買うのだとか。
同じような例は他にもあり、NARUTOのラーメンだとか、ドラえもんのどら焼きもそれに該当します。
このように、アニメにおける食の宣伝効果は極めて高いのです。
アニメがいかに食を魅力的に見せることができるのか、事例を挙げてみました。

①幼少期からの刷り込みが非常に高い
上記の例(ポケモンのおにぎり、ドラえもんのどら焼き)と同じケースです。

●「アルプスの少女ハイジ」
ハイジが好きだったのがパン、チーズ、山羊乳でしたが、どれも粗末な食事ばかり。
しかし、アニメを見ていた子供たちは違いました。
中でもとろけるチーズの描写に釘付けとなり、チーズをねだる子供が続出したのです。
しかし、当時入手できるチーズはプロセスタイプしかなく、
アニメのようにとろけなかったため、TV局にクレームを入れる人が後を絶たなかったのだとか。

②飢えや渇きを極限まで演出する。またはデフォルメ描写できる。
実写で俳優に太らせることはできても、飢えや渇きは人命に関わるため難しいからです。

●「あしたのジョー」
ジョーの宿敵力石徹の減量シーンはもはや語り草。
渇きを極限まで表現できるアニメだからこそ、この名シーンが生み出されたと言ってもいいでしょう。
特に蛇口に針金という無慈悲なシーンはかなりショッキングでした。
実はこれには元ネタがあり、ファイティング原田氏のエピソードをそのまま頂戴したものです。
太りやすい体質だった原田氏は、減量後半では水を飲むことを絶つべく、ジムの蛇口に針金を巻いていたそうです。

●「火垂るの墓」
節子が徐々にやせ衰え、衰弱死するシーンはあまりにも悲惨すぎました。
おかげで、多くの人々に二度と見たくないと言わしめることに。
しかし、演出に手を抜かなかったからこそ、戦争の悲惨さを描写することができたとも言えます。
なお、原作者の野坂昭如氏曰く「自分はあのような優しい兄ではなかった」とのこと。

③外食チェーンを蘇らせたケースもある

●「キン肉マン」
キン肉マンは「牛丼一筋300年~」なんて歌うほどの牛丼好き。そして、その牛丼は「吉野家」。
しかし、キン肉マンがもともと食べていたのは「なか卯」の牛丼でした。
それがなぜかアニメでは吉野家に変わってしまいます。
当時、吉野家は倒産し、その更生途中だったのですが、イメージアップを図るべく働きかけたものでした。
そして制作側もこれを快諾。結果アニメは大ヒットし、子供たちが店に押し寄せるまでになります。
スポンサー料はゼロ。まったくのボランティアだったというから驚きです。

④穴場になりそうなのがプロダクトプレイスメントの導入
実写映画でプロダクトプレイスメントを導入するのは普通ですが、アニメとなるとほぼありません。

●新海誠作品全般
新海監督は、食のディティールを細かく描写することにこだわる人です。
加工食品に至っては、商品名を変えることなく、そのまま登場させている場合があります。
例えば「天気の子」では、コイケヤポテチ、日清チキンラーメン、かどやごま油をきっちり描き込んでいました。
そこまで描くか?というぐらい緻密な作画です。
新海監督から使用の打診があった場合は、二つ返事で受け入れた方がよいでしょう。

⑤以下は比較的新しく、食が印象的に使用されている作品群です

●「スキップとローファー」
ド田舎から東京の進学校に入学した純朴な女子高生の話。
食が登場人物の絆を強めるのにかなり効果的な小道具として利用されています。
スター“マ”ックスコーヒーでタピオカドリンクを頼むときのセリフがなかなか印象的です。
『期間限定って、ズルい響きだよね』
いや、全くその通り。ズルいと思います。

●「薬屋のひとりごと」
中国と思われる国の宮廷でのお話。
薬師の主人公が都で働くことになり、帝の毒見役にまで抜擢されます。
そして宮廷内で発生する諸問題を、自身の薬学、栄養学の知識によって解決に導くというもの。
赤子に蜂蜜はご法度だとか、舞った小麦粉は粉塵爆発するとか、いろいろ勉強になります。

⑥最後にディズニーの例
あくまで筆者の印象に過ぎないのですが、不思議と印象的な食のシーンが少なかったりします。

●「わんわん物語」・・・ミートボールパスタ
●「レミーのおいしいレストラン」・・・ラタトゥイユ
ぐらいでしょうか。異論は認めます。

とはいえ、最近の作品は小粒化のせいもあるのか、食の描写が強化されているようです。
●「あの夏のルカ」・・・ジェノベーゼパスタ(やや緑色が控えめか)
●「私ときどきレッサーパンダ」・・・小籠包(中華圏の人々や日本人でないと分かりづらい)
ディズニーのことですから今後強化してくるかもしれませんね。

では、いかにしてアニメで食を宣伝すればいいのでしょう?
まず、当りをつけるべく、色々な原作漫画を読み込むことが重要です。
藤子・F・不二夫先生がどら焼き好きなように、自身の作品に食の好みを反映させている場合があり、漫画から原作者の食の好みを見つけることは容易だからです。
そういうわけで、原作者に食品、あるいは食事券を送ってみてはいかがでしょう。
とはいえ、いきなりは失礼ですから、事前に出版社に話を通しておきましょう。
相手も決して悪い気はしないでしょうし。
キン肉マンのような例もありますので、決してありえない話ではありません。
万が一、漫画で使用され、さらにアニメ化にでもなろうものならしめたもの。
人気アニメにでもなれば、その宣伝効果は計り知れません。
また、プロダクトプレイスメントの申し出があれば二つ返事で受けましょう。
アニメキャラほど影響力の大きい食のインフルエンサーは他にいないのです。
アニメなら出演俳優の不祥事でお蔵入りする不安もありませんので。

参考記事
ついに「ディズニー離れ」がはじまった…(PRESIDENT 2024/01/13)
・・・マーベルスーパーヒーローものはさすがに大苦戦のようです
世界が欲する日本アニメ、市場10年で2倍も人手不足がリスクに(JBpress 2024/01/02)
・・・急速に拡大する市場に人材が追いついていないようです
日本の漫画がフランスの食文化を変える 「アニメ飯」の絶大な影響力(クーリエ・ジャポン 2023/7/28)
・・・フランスでは漫画も大人気です。しかもアナログな紙媒体が
キン肉マンの牛丼秘話 「なか卯」か「吉野家」か(J-CAST 2010/4/14)
・・・ゆでたまご先生は永久にタダで食べることができるどんぶりセットをもらったとのこと
NHKスペシャル「世界に響く歌 日韓POPS新時代」(2024/1/7)
・・・J-POPは縮小する日本市場で細々とやっていくことになりそうですが、アニソンには期待が持てます

動画サイト
「Gastronogeek」アニメ飯を作るフランス人シェフの動画サイト
・・・「NARUTO」のラーメンや「ロード・オブ・ザ・リング」のレンバスなどを再現しています
マンガ飯再現料理人もりぞの
・・・この人凄いです。オススメは「美味しんぼ」の再現料理

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