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東京オリンピックの選手村食堂

category : メールマガジン2016 2016.8.31 
立秋もすぎ暦の上ではもう秋となりましたが、
いまだ暑さがひく気配はまだまだ感じられないですね。
今年は残暑も厳しくなりそうですので、みなさん体調管理にはお気をつけ下さい。

さて、先日ブラジルにおいてリオオリンピックが開幕しました。
今年は国内外問わず、喜ばしいニュースが今のところ少ないので、
日本の選手たちのはつらつした映像から元気をもらいたいものです。

約4年後には、いよいよ東京オリンピックがやってきます。
今回はオリンピック開催期間中に開かれる選手村食堂での食事について
高度経済成長期真っ只中に開催された1964年はどの様に対応していたのか、
そしてこれから迎える2020年にはどんなことが待ち受けているのか調べてみました。

1964年に開催された東京オリンピックでは、
参加国が93か国、参加選手数が5,151名で、関係者を含めると10,000人にのぼります。
開村から閉村までの期間中に、牛340頭、豚280頭、ヒツジ600頭、ニワトリ6万羽、エビ・鮭・ヒラメ合計46トン、
野菜356トン、鶏卵72万個、米16トン、食パン8万6千斤、牛乳50万本が消費されたと言われており、
さらに毎日7000食もの食事が作られていました。

この時の選手村食堂の運営をまかされていたのは、帝国ホテルの新館で料理長を務めていた村上信夫氏ですが、
同氏は初めてづくしの状況の中、世界中からやってくる大勢の選手に喜んでもらえる食事をつくるため
2つのことに取り組みます。
1つは、日本にはなじみのない国のレシピを作りあげること。
料理本が手に入る国は本を参考にすればよかったようですが中近東やアフリカ等、料理本が手に入らない国においては、
各国の在日大使館を訪ね、大使館付きの料理人や、大使や館員の夫人に代表的な料理を作ってもらったと言います。
その様な地道な努力の中で完成させていったレシピは、オリンピックから約50年後の2013年に
福岡市にある中村調理製菓専門学校で「牛肉の煮込み」「牛肉パイ包み焼き」「舌びらめのチーズ焼き」等の
一部レシピが公開されています。
もう1つは、冷凍食品を材料として使うことでした。
選手たちは一般人の2倍のカロリーを必要とするため上記にも記載したとおり食材の量も膨大で、
これだけの量を生鮮材料だけでまかなおうとすると、マーケット価格に影響を与え、値段が上がってしまうため
いっぺんに調達しようとせず、事前に買って冷凍保存しておく必要がありました。
当時は決して美味しいものではなかった冷凍食品ですが、同氏は食材の冷凍方法を徹底的に研究し、
外国への出向経験を持つ部下から「なるべく低い温度へ急冷するのが良い」というアドバイスをもらったり、
冷凍食品会社の技術者と一緒に、冷凍前の処理方法や解凍方法の実験を繰り返し、
試行錯誤の末、実用化にこじつけます。
この時の研究により東京オリンピックの後、ホテル・レストランへ冷凍庫が普及し、
業務用の食品として冷凍食品が大きく発展する契機になったようです。

2020年に開催される東京オリンピックでは、近年のオリンピックのデータから
参加国は200か国を超え、参加選手数も倍以上の10,000人は超えることが想定されますが
その中で問題とされているのが、プロのシェフの人員不足です。
1964年当時は400名で対応し、2020年には1,000名は必要とされている中で
選手村で高い基準の料理を振る舞えるプロのシェフは現状100人程と言われています。
対策としては、通常10年かかるプロのシェフの育成をあと数年で遂行する短期間での育成と
どうしても足りない場合に100名ほど全世界から有志を集うことが考えられているようです。

今回、2020年東京オリンピックの選手村食堂がおかれている状況としては、
前回開催時より約50年が経ち、その間に日本食は世界において認知度及び評価を高め、
さらには和食が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたことでさらに注目が集まっています。
前回よりも日本の食に対する期待を抱いて外国の選手たちが来日する高いハードルの中で
優秀な人材と格段の進歩を遂げた冷凍食品をはじめとする技術を結集し、
さらに日本の食の評価が高まることを願うばかりです。
欲を言えば、食に従事する者として何らかの形で携わってみたいものですね。
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